2018年9月2日 オルホノド・ダイチン
南モンゴルクリルタイ(世界南モンゴル会議 Southern Mongolia Congress)
国連人種差別撤廃委員会に参加して「文書の提出」「直接参加」の意義を知りました
今回、国連の人種差別撤廃員会に参加したのは、私にとって初めての、しかも大変勉強になる体験でした。「国連」についても、どこか抽象的な、遠いイメージしかなかった私は、直接その場に参加して、今後の運動についての多くのヒントと、これまでの自分たちの考え方についての反省点を見出しました。
まず、国連に提出した文書は、アジア自由民主連帯協議会事務局が中心に、私たちがこれまで人権報告書として発表してきた南モンゴル(内モンゴル自治区)の人権侵害状況を簡潔にまとめて英訳したものです。このような文書を出しても、どの程度効果があるものか、正直私の中ではあまり期待していなかった面もありました。
しかし、人種差別撤廃員会の委員の方々は、提出した文章を、とても丁寧に読んでくださっていました。NGOとのランチタイムの交流会でも、また、委員会の本会議でも、委員の人たちは、提出されたNGOからの沢山の資料を基に、中国側に適切な疑問を呈していましたし、また、NGOと委員の人たちもとてもフランクに議論し交流していました。
ここで実感したのは、私たちのモンゴル運動の英語力の乏しさでした。いい悪いではなく、このような会議の場は事実上英語で会話がされます。チベットの代表団も、ウイグルの代表団も、英語で丁寧にコミュニケーションを取っていました。私は英語が全くできないため、その場に入っていくことができず、藤木さんや田口さんなど、サポートしてくださる方がいたからようやくスピーチできたとはいえ(半分は藤木さんに読んでもらいましたが)ここでもっと自分に英語力があれば、委員の方々やほかのNGOともより深い関係が作れたのにと残念に思いました。この点は、モンゴルの運動の中で、もっと真剣に考えねばならない問題でした。
私は日本の歴史問題について語る知識はありませんが、これまで、日本の中の、主として日本の過去を批判する人たち(その中には純粋な人もいるでしょうが、正直、日本のことは厳しく言うのに、現在進行形の中国政府の私たちモンゴル人やチベット、ウイグルへの弾圧には全く沈黙を守る点を理解できない人もいます)は、おそらく国連の場に、英語のできる活動家や学者をたくさん送ってきて、国連の様々な委員会と深い交流を長年してきたのではないかと思います。逆に言えば、私たちモンゴル人がもっともっと国連に、毎年資料を提出し、出来ればいろいろな委員会に出席して影響を与えることが大切で、国連という場を、外から批判したり、また抽象的に論ずるよりも、まずそこに何らかの参加をしていかねばならないことがわかりました。まだまだ私たちの力では足りないのですが。
今回の人種差別撤廃委員会で、私の知る限り、世界ではじめて、南モンゴルの問題が中国に対し勧告されました。モンゴルの土地が不当に奪われ、それに対する正当で平和的な抗議が弾圧されていること、モンゴル語教育が事実上廃され、モンゴル人が自分の民族の言葉を学ぶ権利が奪われていること、これは人種差別に当たるという勧告がなされたことを、私は大きな一歩と思います。この成果は、山本優美子さん、藤木俊一さんら、日本の皆様の善意と、英語面でのサポートなくしてできなかったことです。ここに深く感謝の念を評させていただきます。